アルファロメオというブランドの、欧州域内での販売数V字回復を支えているモデル「ジュニア」が、ようやく日本にも上陸します。
コンパクトSUVですね。全長がトヨタのヤリスより少し長く、Mazda2より少し短い、というサイズ感。
6月24日に日本でのデビューということで、こちらがティザー映像です。
そのデザインが発表されたときは「こんなひどいデザインで売れるわけない」と絶望したものですが、ふたを開けてみると、少なくとも欧州市場では好評。
日本の自動車評論家や自動車系ユーチューバーなどの実見によると「実車を見ると写真よりぜんぜんかっこいい」のだそうです。


たしかに、特にリアビューはなかなかいいんじゃないかと思わされますね。
私は買えないし、買うつもりもないですが、妻は「もしお金があったら買いたいかも」だそうです。
ラインナップは3種類で、まず1.3Lターボのガソリンエンジンと電気モーターによるマイルドハイブリッド・バージョンの「イブリーダ」。
138p+28psで、6速DCTのトランスミッション。FFと4WDが用意されるようです。
次に、BEVが2種類。
156psの「エレットリカ」と、280psの「エレットリカ・ヴェローチェ」となります。いずれも前輪駆動。
スポーティーな「ヴェローチェ」の方は車重が1590㎏で「同クラスのライバルEVより約200㎏軽量」とうたうだけあって、0-100加速5.9秒と、このクラスではかなりの俊足。
トルクセンサー式LSDが標準装備されていて(うちのペッピーノさんにも後付けされている「Q2」システムを進化させたものだとか)…
その他、高剛性アンチロールバー、専用のブレーキシステムとスポーツサスペンションを備えるそうです。
かつてはエンジンが売りのひとつだったアルファですけれど、このご時世なので、売りはもはや「クイックでシャープなハンドリング」のみ。
その点にのみ注力して「アルファらしさ」を演出して、SUVではあるけれど、ひたすら気持ちの良いコーナリングマシン、というところで勝負しているようです。
ちなみに走りの味付けは「8C」「4C」「ジュリアGTA、GTAm」などを送り出した、スポーツカーの名手、ドメニコ・バニャスコ氏が主導して仕上げたとのこと。
まあ、そこが純粋に評価されての欧州での好調であり、25年度の欧州カーオブザイヤーのファイナリストにも残っているということでしょう。
商品としてはかなり魅力的…なはずですが「イタリア車アレルギー」のある日本市場では、ヨーロッパのようにガンガン売れるかどうか、ちょっと疑問。
そうはいっても、イタリア人が作ったものだから信用できないね…と。
どうしてもそこから離れられない、離れることを拒否するんですよね、日本のユーザーは。
でもこの「ジュニア」、プラットフォームは、同じステランティス・グループの「ジープ・アベンジャー」「プジョーe-2008」などと共通のEV用「e-CMP」を採用。
電気モーターも、マイルドハイブリッドのエンジンも、グループ共用のものですから。
しかも、組み立てはイタリアではなく、ポーランドにある、ステランティスグループのティヒ工場で行われています。
「イタリア人が作った車」ではないし「イタリア製の車」でもない。
多国籍チームが「アルファロメオ風」に味付けして、スポーツバージョンだけは、イタリア人のバニャスコ氏がリーダーとしてモディファイした、という車。
それでもまだ「イタリア車は信用できない」という表現を使いますかね。
もちろん、ポーランド製がイタリア製より良い、などと言うことは全然できないんですけれど。
ちなみに「ジュニア」と「ジープ・アベンジャー」は同じ工場で作っていて…
また、同じポーランドにあるグリヴィツェ工場では、プジョー、シトロエン、オペル、フィアット、そしてトヨタの欧州向け商用車まで作っています。
ステランティスは、セルビアやスロバキアにも大きな工場を構えています。
いまだに「イタ車だから…」などと言っている人は、いったいいつの時代を生きているんですか?ということになります。
世界の産業構造は、そういう風になっているんですよ。
メルセデス・ベンツ、BMW、フォルクスワーゲン、ステランティスの各ブランド、ルノー、ジャガー、ランドローバー、ボルボなどは…
みんな、中国とインドの工場でも車を生産しています。
その他、タイ、インドネシア、ベトナム、マレーシアなどで生産を展開しているメーカーがいくつもあります。
日本メーカーだって、ものすごく手広く、アジア、北米、東欧などに生産拠点を持っているのは、知っている方なら知っている常識的なこと。
日本メーカーの海外工場から日本への「逆輸入車」だってあります。
トヨタのハイラックスや、ライズ(一部)、ホンダのシビックType-R(先代まで)、スズキのスイフトスポーツ、Mazda2(デミオ)の一部やCX-3などなど…
こういう時代ですから、BMWはドイツ製、フィアットはイタリア製、ルノーはフランス製、などと頭から決めつけてものを言えないですよ。
そしていまや、アルファロメオとフィアットに関しては、イタリア国内の工場に稼働を休止、制限しているところがたくさんあって…
東欧で作られている「イタリア車」のほうが勢いがある、という状況。
そう、ステランティスグループのヘッド・クォーターはイタリアでもフランスでもなく、オランダのアムステルダムにあるし、フィアット本社もアムステルダムです。
現代を生きる私たちは、いろんなところで、固定観念を捨てないと。
とくに、中高年が知っていた「世界地図」は、もうこの地球上から消えたんです。気づかないうちに。
良くも悪くも、国境を越えてがっちりバインドしてしまった経済。この時代に、ナショナリズム(国家主義)という政治イデオロギーを前面に出して突っ張るというのは…
経済をぶっ壊す覚悟がないといけない、ことになっています。
ただね、グローバル経済の恩恵を受けている層は「西側諸国」では社会の一部に過ぎないので…
アメリカでも日本でも欧州でも、そこから排除されてどんどん困窮している人たちは…
「もう経済なんてどーでもいいから、とにかくエリート層をぶっ潰せ!外国人を排除しろ!」
という方向に向かっていますね。
エリート層をぶっ潰し、外国人を追い出したら、たしかに気持ちいいかもしれませんが…
必然的に、今の社会体制や現行の経済システムはぶっ壊れざるを得ないのですから…
これは「革命」です。その言葉を使いたくなかったとしても、現実はそう。
その後、どうするのかのビジョンがないと、大変なことになる。
「ぶっ壊せ」「ぶっ潰せ」派の人たちや、それを扇動している人たちの中に、具体的で実現可能な将来へのビジョンがない、このムーブメント。
車の問題からズレてきましたけれど…ほんと、この先どうなるんでしょう。
心細くない人は、よっぽど楽観的、お花畑の住人さんなんでしょうね。
ひとりひとりが社会の一員として、主体的に考えて「なんとかする気」がないと、まじで「どうにもできない」ひどい明日が来ますよ。
めんどくさかろうが何だろうが、これは我々自身が招いた現実なのです。