アルファと私と小倉唯

愛車アルファロメオと声優小倉唯さんのこと、そして私の日常と考えたこと

これが受けるならまだ大丈夫


仕事帰りの妻と待ち合わせて、二人でBunkamuraル・シネマ渋谷へ行って映画を観て来ました。

 
邦題が『ドマーニ!愛のことづて』という作品。原題を直訳すると『まだ明日がある』になりますけど...
 
「愛の」とかいう文句を、むりにでもくっつけないと「イタリアっぽくない」と配給元が思ったのかな。
 
こちらがオフィシャルサイトのリンクです。
 
 
宣伝を見ると、フェミニズム映画なのかな?と思いますね。まあ、そうではあるのですけれど...
 
舞台は終戦直後の1946年。ローマの街の半地下の家に住む、貧しい家庭の主婦デリア。
 
家族のために仕事を掛け持ちで懸命に働き、家事にもベストを尽くし、夫の父親の介護までしているのに...
 
夫から「役たたず」だの「全く価値のない女」だのと蔑まれ、それに対して何も言い返せず...
 
何かというと八つ当たりのように激しい暴力を受けるのが日常。
 
(現代なら完全に逮捕収監されるレベル)
 
金持ちの家の青年との交際が順調な娘からも、そんなみじめな生き方を非難され。
 
一方、幼なじみだった誠実な自動車修理工の男性から想いを寄せられ、どこか心が通じ合いながらも、主婦としての責任から踏み込めずにいる。
 
そんな毎日を送っている彼女のところへ、一通の「手紙」が舞い込んだ。デリアは一瞬顔を輝かせた後、その手紙を夫に見つからないところへ隠して...。
 
という話。ラスト40分ほどはハラハラドキドキの展開。そしてラストに、思ってもみなかった大どんでん返しが!
 
という映画なのですけれど...
 
思いがけないところで「政治」が重要なものとして顔を出して来るのです。
 
今の若い人の口調で言うところの「思想強め」?のお話だったりして。
 
そんな社会派なテーマの作品なのですけれど、これが本国イタリアではメガヒット。
 
観客動員数600万人というのは、イタリアの人口を考えると、赤ちゃんから寝たきりの老人も含めて、イタリア人全体の10%ほどが映画館に足を運んだことになります。
 
そして『ライフ・イズ・ビューティフル』を抜いてイタリアの映画興行史上5位の大ヒットを記録しました。
 
参考までに、日本映画史上で娯楽作品の要素が少ないものが動員数の上位30位以内に入ったのは、1965年のドキュメンタリー映画東京オリンピック』だけです。
 
あとは戦前の『明治天皇と日露大戦』ですが、これは軍国主義プロパガンダ映画であるのと同時に...
 
日本の戦争と大勝利をスペクタクルとして描いて、観客のカタルシスを煽る一種の娯楽作品なので、政治的な問題意識に訴える映画とは違いますね。
 
やはりそういう映画は、日本では大ヒットには至らないのでしょう。
 
監督、脚本、そして主演を務めるパオラ・コルテッレージは、もともとイタリアの人気コメディエンヌなのですが、この映画では娯楽的な要素はほとんど封印。
 
(暴力シーンなどあまりに悲惨な場面では、突然コメディ調のミュージカルになったりしますが)
 
そんな本質的に硬派な映画がそこまで熱狂的に受け入れられるというのは、日本人のイタリアのイメージからすると意外かもしれません。
 
私は「まあわかる。というかいかにもイタリアらしい」と、納得しますけれど。
 
娯楽作品ではないし、日本人が敬遠する硬くて重いテーマが中心にあるせいか、日本での客の入りは映画館で見たところさんざんでした。
 
日本人ほど政治とか思想とかいうものを、タブーとも言えるほどに敬遠する国民は、他にいないんじゃないかとさえ思いますけどね。
 
まるで何かに怯えているみたい。いまだに大日本帝国の亡霊に取り憑かれているんですかね。
 
ともあれ...
 
いま極右政党が中心のメローニ政権下で、イタリアがどんな様子になっているのか、長らく現地に足を運んでいない私は案じていたのです。
 
でもこの映画が受けるようなら、あの国はまだ大丈夫だと、心強く思いました。