アルファと私と小倉唯

愛車アルファロメオと声優小倉唯さんのこと、そして私の日常と考えたこと

イタリア警察が使用拒否のパトカー車種

イタリアには警察が三つあります。

 

内務省管轄のPolizia(ポリツィア)。

国防省管轄のCarabinieri(カラビニエーリ)。

財務省管轄のGuardia di Finanza(グァルディア・ディ・フィナンツァ)。

 

この三つ。細かく言うと他にもあるのですが、まあこの三つのどれかから派生した組織の呼称と思えばいいです。

 

このうち国防省に属するカラビニエーリの、現場で職務を遂行している「おまわりさん」(厳密には軍隊の一部なので兵士なんですけれど)の団体「UNARMA」が…

 

アルファロメオのある車種を「現場任務に適さない」として使用することに反対し、ローマ検察庁に、正式の「告発状」を出して話題になっています。

 

それは、アルファロメオがこの数年間主力商品として展開してきたハイブリッドのSUV「トナーレ」です。

 

 

このところ販売不振からV字回復し始めているアルファロメオですが、それをけん引している小型SUVの「ジュニア」はまだパトカーには導入されておらず、トナーレがSUVパトカーの主力を成しています。

 

UNARMAが現場から収集したという報告によれば、トナーレは緊急事態が生じ、高速度で被疑者の車両を追跡している際の走行安定性や、旋回性、ロードホールディングに問題があると。

 

これにより「何人かの将校が(軍隊なので)これらの欠陥のせいで彼らの安全が脅かされ、事件介入の有効性が失われた」と。

 

要するに、被疑者の車を追いかけてカーチェイスをしている際に、事故を起こして危険なことになり、被疑者にも逃げられてしまった事例が複数あったということでしょう。

 

告発状では「通常の使用での走行性能に問題があると言っているわけではない。あくまでも『法務執行機関による緊急かつ特殊、集中的な作戦遂行上の問題』であって、車両やメーカーのイメージを悪化させるものではない」としています。

 

これを解決するため「組合は各種テクニカル文書、走行テスト結果へのアクセスを含む、完全で徹底的な調査を要求する」「容認できない事態であり、すべてが解決するまで組合員はこの車両の使用を拒否する場合もあり得る」と、組合長はコメントしているようです。

 

これまでのところ、カラビニエーリのパトカーの主力はアルファロメオの「ジュリア」でした。

 

 

スポーツセダンのジュリアと比べると、SUVのトナーレはどうしても重心が高くならざるを得ないのは確か。

 

なので、激しいカーチェイスのような「作戦遂行時」に横転するなどの事故が起きている可能性はあると思います。

 

ただ、ジュリアは「モデルとしてのセールス面での寿命」が終わりに差し掛かっています。パトカーの納入業者が一般車も扱う会社であった場合、人目に付くパトカーに、売れ筋の車種を採用してもらいたがるかもしれません。

 

告発状から透けて見えるのは、カーディーラーが「今売りたいクルマ」のプロモーションのためにパトカーに向かない車種を売り付け、導入する側もそれを何らかの理由で容認しているのではないか、という風に現場が疑っていることです。

 

今のところ調査がどれぐらい進むのか、パトカーの車種変更や仕様変更、納入業者の変更などがあるかどうかは不透明な状況のようですが…

 

これはイタリアだけの問題ではなく、そもそも「SUVはパトカーに向いているのか?」という問題を投げかけているような気もします。

 

トナーレは、内務省警察=ポリツィアのパトカーにも納入されています。

 

 

セダンなどの重心が低い車が、時の流行からはずれ「売れ筋」でなくなって、もしもメーカーが作るのをやめてしまったら、被疑者追跡の際の高速性能や旋回性能を求められるパトカーは、どうなるのか。

 

ごく一部の例外として、スーパースポーツカーが警察車両に採用されている例もあります。こちらはイタリアのポリツィアに採用された、ランボルギーニ・ウラカン

 

 

しかしもちろん、この手の車両は日本円に換算すると、一台数千万というプライスが付くので、広く制式採用するのは現実的ではないです。

 

それと警察車両には、容疑者や参考人を後部座席に乗せて運ぶ必要が生じることがある、という事情がありますから、2シーターは現実的ではないのです。

 

加えて、凶悪犯や粗暴犯を収容する場合は、前席の警察官と後席の容疑者の間に仕切りを設ける必要もあり、どうしてもクーペスタイルでは使い勝手が悪い。ドアも後席だけロックできる仕組みが必要です。

 

その上で、容疑者追跡などで激しい操縦が必要な場面に対応するため、腰高なSUVやワンボックスのバンがベースの車両を避けるとなると…

 

結局、サルーン・セダンタイプの車両が、パトカーには最適ということになります。

 

まあ、ステーションワゴンでも大丈夫かもしれませんが、銃撃や投石などを想定して、外板や窓に防弾機能も必要となると、グラスエリアの広いワゴンは都合が悪いし。

 

(日本だってどんどん治安が悪化しているので、これからは同様ですよ)

 

やっぱり、パトカーにはセダンが最適なんですよね。

 

そうしたタイプの車が減って、商用車以外は、ミニバンとSUVとニッチな需要のスポーツカーだけ、という現代の自動車を巡る状況は、思わぬところで問題になってくるかもしれないです。

 

パトカーのベース車両専用に、セダンのモデルを残すことがメーカーに求められる時代に、これからなるのかなと思ったり。

 

みなさんは、どう思われますか?

 

 

 

では、おまけとしてイタリアの警察車両の画像を置いておきます。

 

ちなみにイタリアの中型警察車両には、アルファロメオが一番多いです。

 

かつてアルファが国営企業であった名残でしょうか。いまでも制式採用されることが多いみたいですね。

 

まずはカラビニエーリ。こちらは二世代前のアルファ156です。うちの愛車ペッピーノさんの仲間。左側の人は軽機関銃を携帯しています。カラビニエーリはテロやマフィアなどの組織暴力犯罪にも対応するので、こういう装備もあります。

 

 

これは我が家の前任車、メメと同じアルファ155。

 

 

こちらは国営時代の105系ジュリア・スーパー。

 

 

ベース色は黒く見えるけれど、実際は濃紺です。

 

こちらが財務省警察グァルディア・ディ・フィナンツァのパトカー。

 

 

そしてこちらは内務省警察のポリツィアのパトカー。一世代前のアルファ159

 

 

こちらは現行のジュリア。

 

 

そして、こんな豹のマークが付いている車両も。

 

 

スクアドラ・ヴォランテ=空飛ぶチーム。日本でいえば交通機動隊や高速警察隊のような任務に就いているチームのマークです。

 

イタリアの若者はこの手のパトカーを「パンテーラ(英語だとパンサー)」と呼んでいます。

 

ベース車両をレーシングカー並みに魔改造している上、ドライバーは凄腕の精鋭ぞろいなので…

 

「パンテーラのアルファロメオに追いかけられたら、フェラーリでもポルシェでもニッサンGTRでも振り切ることはできない!」という都市伝説?がまじめに語られていたのを、私も留学時代、直に聞いたことがありますよ。

 

というわけで、イタリアのパトカーに生じた騒動と、それが投げかける警察車両のベースの問題でした。